冬の星座
オリオン座の思い出
20代の頃毎晩のように友人と酒を飲んでいたことがある。新宿の西口ガード下の『思いで横丁』通称『ションベン横丁』にある焼き鳥屋で毎晩終電近くまで飲んでいた。
焼きトンと湯豆腐と御新香ぐらいしかツマミのない、年老いたおばさん姉妹がやっている店だった。早稲田の大学院に行っている息子さんがたまに手伝いに店に出ていた。カウンターだけの1階と2階に数席のテーブルがあるうなぎの寝床のような狭い店だった。
そこの2階で僕たちは毎晩飲んでいた。
何を話していたのかよく覚えていない。政治のことや友人が大学で専攻だった社会学のこと…もっとくだらないことをたくさんたくさん議論していたような気がする。ただ熱い思いがぶつかり合っていただけかもしれないが、話したいあふれでる思いが山のようにあったのだ。
開店前の早い時間帯に行くと、2階のテーブル席でおばさんたちが串に豚肉を刺して仕込みをしていた。おばさんが時々肉の切れ端を窓からひさしに放り投げる。そこには近所の野良猫が集まっていてそれをうれしそうに食べていた。
毎晩のようにその店に行っていたから、その猫たちともすぐに顔見知りになった。しばらく見かけなかったメス猫が子猫を何匹か連れてやってきた。その子猫たちは怖がって人間には決して近寄ろうとしなかった…そんなことを今でもしっかり覚えている。
夜がふけてから店を出て家路に向かう時、頭上にいつもオリオン座が見えた。オリオン座の三ツ星を見上げながら毎日誰もいないアパートに帰っていった。
人気のない部屋はいつも寒々とした空気に充ちていた。
今でも冬になり南の夜空にオリオン座の大きな姿が見えるとあの時の思いがよみがえり、懐かしいような恥ずかしいような気持ちがするのだ。
オリオン座の思い出
20代の頃毎晩のように友人と酒を飲んでいたことがある。新宿の西口ガード下の『思いで横丁』通称『ションベン横丁』にある焼き鳥屋で毎晩終電近くまで飲んでいた。
焼きトンと湯豆腐と御新香ぐらいしかツマミのない、年老いたおばさん姉妹がやっている店だった。早稲田の大学院に行っている息子さんがたまに手伝いに店に出ていた。カウンターだけの1階と2階に数席のテーブルがあるうなぎの寝床のような狭い店だった。
そこの2階で僕たちは毎晩飲んでいた。
何を話していたのかよく覚えていない。政治のことや友人が大学で専攻だった社会学のこと…もっとくだらないことをたくさんたくさん議論していたような気がする。ただ熱い思いがぶつかり合っていただけかもしれないが、話したいあふれでる思いが山のようにあったのだ。
開店前の早い時間帯に行くと、2階のテーブル席でおばさんたちが串に豚肉を刺して仕込みをしていた。おばさんが時々肉の切れ端を窓からひさしに放り投げる。そこには近所の野良猫が集まっていてそれをうれしそうに食べていた。
毎晩のようにその店に行っていたから、その猫たちともすぐに顔見知りになった。しばらく見かけなかったメス猫が子猫を何匹か連れてやってきた。その子猫たちは怖がって人間には決して近寄ろうとしなかった…そんなことを今でもしっかり覚えている。
夜がふけてから店を出て家路に向かう時、頭上にいつもオリオン座が見えた。オリオン座の三ツ星を見上げながら毎日誰もいないアパートに帰っていった。
人気のない部屋はいつも寒々とした空気に充ちていた。
今でも冬になり南の夜空にオリオン座の大きな姿が見えるとあの時の思いがよみがえり、懐かしいような恥ずかしいような気持ちがするのだ。
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by korosukepoh777
| 2005-03-06 22:10
| あの日の思いで